ゲーム依存(ゲーム障害)の診断と治療——原因・診断基準・治療法を和光メンタルクリニック札幌宮の森(札幌市中央区・児童精神科)が詳しく解説

ゲーム依存(ゲーム障害)の診断と治療——原因・診断基準・治療法を和光メンタルクリニック札幌宮の森(札幌市中央区・児童精神科)が詳しく解説

「子どもがゲームをやめられず生活が崩れている」「不登校になりゲームに明け暮れている」「ゲーム依存かどうか診断してほしい」「どんな治療があるのか知りたい」——ゲーム依存(ゲーム障害)は2019年にWHOが正式な疾患として認定した医学的な問題です。適切な診断と治療で改善できますが、まず「何が問題で・何を治療するのか」を正確に理解することが重要です。札幌市中央区の児童精神科専門クリニック・和光メンタルクリニック札幌宮の森が、ゲーム障害の診断基準・診断のプロセス・治療法・薬物療法・認知行動療法・家族支援まで、わかりやすく詳しく解説します。


目次

  1. ゲーム依存(ゲーム障害)とは何か——WHOによる正式な疾患定義
  2. ゲーム障害はなぜ起こるのか——脳科学的なメカニズム
  3. ICD-11によるゲーム障害の診断基準
  4. ゲーム障害の診断プロセス——受診から診断まで
  5. ゲーム障害と合併しやすい精神疾患・発達特性
  6. ゲーム障害の重症度評価——使用されるスケール
  7. 【治療①】動機づけ面接(MI)——治療の入口
  8. 【治療②】認知行動療法(CBT)——思考と行動を変える
  9. 【治療③】薬物療法——背景疾患へのアプローチ
  10. 【治療④】家族支援・家族療法
  11. 【治療⑤】入院・集中プログラム
  12. 治療の経過——回復までに何が起きるか
  13. 不登校・ひきこもりとゲーム障害の複合ケース
  14. よくある質問(FAQ)
  15. 和光メンタルクリニック札幌宮の森での診療について

1. ゲーム依存(ゲーム障害)とは何か——WHOによる正式な疾患定義

世界保健機関(WHO)による正式認定

**ゲーム障害(Gaming Disorder)は2019年、世界保健機関(WHO)がICD-11(国際疾病分類第11版)**に正式に収載した精神疾患です。日本でも2022年のICD-11発効に伴い、医学的な疾患概念として公式に認知されています。

この認定により、「ゲームのやりすぎは意志の問題」「甘えだ」という誤解から、「脳機能に関わる医学的な治療対象」という理解への転換が求められています。

「ゲームが好き」との決定的な違い

ゲーム障害の診断において最も重要な概念は**「コントロールの喪失」**です。

  • ゲームが好き・はまっている: やめようと思えばやめられる。生活が維持できている
  • ゲーム障害: やめたいのにやめられない。生活・学業・対人関係に著しい支障が出ている

時間の長さではなく「コントロールできているかどうか」が本質です。


2. ゲーム障害はなぜ起こるのか——脳科学的なメカニズム

ドーパミン報酬回路の関与

ゲームはプレイヤーが「もう少しやれば達成できる」という予測不能な報酬(レベルアップ・アイテム入手・勝利)を繰り返し与える設計になっています。この仕組みは可変比率強化スケジュールと呼ばれ、スロットマシンと同じ原理で脳のドーパミン報酬回路を最も強力に刺激するものです。

繰り返しの刺激により脳が「ゲーム=最大の報酬」と学習し、他の活動(勉強・友人・食事)からは満足感を得にくくなります。これが依存の神経生物学的な本質です。

前頭前野機能の低下

前頭前野は「やめよう」「後で考えよう」という衝動制御・実行機能を担う脳の部位です。過剰なゲーム使用が続くと前頭前野の機能が低下し、「やめたくてもやめられない」という状態が強化されます。

子ども・思春期が特に脆弱な理由

前頭前野は25歳頃まで発達途上であるため、衝動制御が未熟な子ども・思春期の若者は成人よりはるかにゲーム依存に陥りやすい脳の状態にあります。ゲームメーカーが意図する設計と子どもの発達段階の組み合わせが、問題の深刻さを生み出しています。

オンラインゲームが特に依存を引き起こす仕組み

  • 終わりのない設計: RPG・バトルロワイヤル型のゲームはプレイに明確な終わりがない
  • 社会的つながり(ギルド・チーム): 「仲間に迷惑をかけたくない」という心理が離脱を妨げる
  • 通知・イベント設計: 定期的なイベント・限定アイテムが継続プレイを強制する
  • ランキング・競争: 相対的な順位への執着がプレイ継続を促す

3. ICD-11によるゲーム障害の診断基準

WHOのICD-11では、ゲーム障害(6C51)を以下の基準で診断します。

診断のための必須基準

A)ゲーム行動のコントロール障害

  • ゲームの開始・終了・頻度・時間・強度・状況などを制御できない

B)他の生活上の関心事・日常活動よりゲームを優先させる

  • ゲームが日常生活・仕事・勉強・人間関係より重要になっている

C)ゲームによる問題が明らかであってもゲームを継続または拡大する

  • 健康・学業・職業・家族関係への悪影響があっても続ける

D)上記の行動パターンにより個人・家族・社会・教育・職業または他の重要な機能領域において著しい苦痛・機能障害をもたらす

E)症状は少なくとも12ヶ月間持続する (ただし症状が重篤で診断基準A〜Dを十分に満たす場合はより短い期間でも診断可能)

重要な補足

「ゲームをする時間が長い」という基準はありません。上記の**「コントロールの喪失→生活への影響→それでも継続」**というパターンが診断の本質です。


4. ゲーム障害の診断プロセス——受診から診断まで

初診・問診

問診では以下を評価します:

①ゲーム使用の詳細

  • 使用しているゲームの種類(オンラインRPG・バトルロワイヤル・ソーシャルゲーム等)
  • 1日あたりの平均プレイ時間・最長プレイ時間
  • ゲームができないときの反応(怒り・不安・暴力)
  • ゲームを優先して失われた活動(睡眠・食事・学校・友人)

②生活への影響

  • 学業成績・登校状況
  • 睡眠状況(就寝時刻・起床時刻・睡眠時間)
  • 食欲・体重変化
  • 家族関係・友人関係

③発症の経緯

  • いつ頃からゲーム使用が問題になったか
  • きっかけとなった出来事(転校・進学・対人トラブル等)

④家族状況・環境

  • 家族のゲームへの関わり・対応
  • 家庭内の環境(スマホ・PC・ゲーム機の設置状況)

発達特性・精神疾患の評価

ゲーム障害にはADHD・ASD・うつ病・不安症が高頻度で合併します(後述)。これらの背景疾患を評価せずにゲーム障害だけを治療しようとすると効果が限定的になります。

必要に応じて以下を実施します。

  • 発達検査・知能検査(WISC-Ⅴ等): ASD・ADHDの評価
  • 心理検査(ADHD評価スケール・CAARS等): ADHDの重症度
  • 抑うつ・不安の評価(PHQ-9・GAD-7等): うつ・不安症の評価

血液検査・身体評価

重度のゲーム障害では生活が著しく乱れているため、以下の身体的な問題を確認します。

  • 栄養状態(長期の食事不摂取・偏食)
  • 睡眠障害の評価
  • 体重・体組成
  • 必要に応じた一般血液検査

診断の確定

問診・各種評価を総合し、ICD-11の診断基準を満たすかを判断します。また、「ゲーム障害そのものの診断」に加えて「合併する精神疾患・発達特性」を同定することが治療計画の策定に不可欠です。


5. ゲーム障害と合併しやすい精神疾患・発達特性

ゲーム障害は単独で存在することは少なく、以下の疾患・特性との合併が非常に多いことが臨床的に重要です。

ADHD(注意欠如多動症)

合併率:約25〜30%

ADHDの衝動性・注意の切り替えの難しさ・退屈への低耐性は、即時報酬を与えるゲームと極めて相性が悪い組み合わせです。ADHDを持つ子どもは衝動制御の神経学的困難から、ゲーム依存に至りやすいとされています。

重要性: ADHDへの薬物療法(コンサータ・ストラテラ・インチュニブ等)が衝動制御を改善することで、ゲーム使用時間の自然な減少につながるケースがあります。ADHDのスクリーニングはゲーム障害評価の最重要事項のひとつです。

ASD(自閉スペクトラム症)

合併率:約20〜25%

社会的なコミュニケーションの困難・対人関係へのストレス・強いこだわりの特性を持つASDの子どもは、対人リスクのないオンラインゲームの世界に居場所を求めることがあります。また、ゲームそのものへの強い執着がASDの特性として現れることもあります。

うつ病・抑うつ状態

合併率:約20〜30%

抑うつ気分・意欲低下・孤立感がゲームへの逃避を促し、逆に長期の依存がうつ状態を引き起こすという双方向の関係があります。うつ病の治療とゲーム障害の治療を並行して進めることが重要です。

不安症

合併率:約20〜25%

社交不安症・全般性不安症を持つ子どもが、現実の対人場面を回避してオンラインに居場所を求めるパターンが多く見られます。不安の治療(CBT・SSRI)がゲーム依存の改善につながることがあります。

睡眠障害

昼夜逆転・遅延睡眠相症候群はゲーム障害に非常に多く合併します。深夜のゲームが睡眠リズムを破壊し、それがさらにゲームへの依存を強めるという悪循環が生じます。睡眠の正常化はゲーム障害治療の重要な要素です。


6. ゲーム障害の重症度評価——使用されるスケール

Gaming Disorder Scale(GDS)

WHO・研究機関で広く使用されるゲーム障害の重症度評価尺度です。コントロール障害・生活優先度・悪影響があっての継続という3つのコアを評価します。

Internet Gaming Disorder Scale–Short-Form(IGDS9-SF)

9項目の簡便な評価尺度で、スクリーニングとして使用されます。

Game Addiction Scale(GAS)

7項目の評価尺度で、依存の各側面(顕著性・気分修正・耐性・離脱・葛藤・再発)を評価します。

使用時間の記録

主観的な「どのくらい使っているか」より、スクリーンタイム機能・ゲームプレイ履歴などの客観的なデータが評価に有用です。受診時に事前に確認してもくると、より正確な評価ができます。


7. 【治療①】動機づけ面接(MI)——治療の入口

なぜMIが最初に必要か

ゲーム障害の治療において最大の障壁は**「本人が変わろうとしていない(治療への動機がない)」**状態です。「病院に連れてこられただけ」「ゲームをやめる気はない」という前熟考期の患者に、いきなりCBTや行動制限を課しても効果はありません。

**動機づけ面接(Motivational Interviewing:MI)**は、本人の内的な変化への動機を引き出すための面接技法です。治療者が「変わりなさい」と押し付けるのではなく、本人が自分の口で「変わりたい理由」を語れるようサポートします。

MIの4つのコアスキル

①開かれた質問(Open Questions) 「ゲームについてどう思っている?」「もしゲームがなくなったらどうなると思う?」など、はい・いいえで答えられない質問で本人の思考を引き出します。

②是認(Affirmations) 本人の強み・努力・価値観を認めます。「これだけ悩んでいるということは、本当は変わりたいという気持ちがあるんだね」

③反映(Reflections) 本人の言葉を繰り返し・言い換えることで、自分の考えを整理させます。

④要約(Summaries) 面接の中で語られた「変わりたい気持ち」をまとめて返すことで、変化への動機を強化します。

変化のステージモデル

ゲーム障害の治療は以下のステージを段階的に進みます。

ステージ特徴MIの役割
前熟考期変わる気がない・問題を認識していない問題への気づきを促す
熟考期変わることを考え始めている変化の動機を強化する
準備期変わろうとしている具体的な計画を立てる
実行期実際に変化しているサポート・強化
維持期変化を維持している再発予防

多くの患者は「前熟考期」から治療が始まります。「熟考期」に入るまでに数回のMIセッションが必要なこともあります。


8. 【治療②】認知行動療法(CBT)——思考と行動を変える

ゲーム障害へのCBTの構成要素

動機づけが高まった後(熟考期〜準備期以降)に、CBTによる具体的な行動変容を進めます。

機能分析(Functional Analysis)

「どのような状況でゲームに向かうのか」を詳細に分析します。

  • 先行刺激(Antecedents): どんな状況・感情・思考がゲームの引き金になるか (例:「学校から帰って疲れたとき」「一人で部屋にいるとき」「嫌なことを考えたくないとき」)
  • 行動(Behavior): どのように・どのくらいゲームをするか
  • 結果(Consequences): ゲームをすることで何が得られるか・何が失われるか

この分析により「ゲームが何の問題を解決しているか」が明らかになり、代替の対処法を見つける手がかりになります。

認知再構成

ゲーム障害に特有の認知の歪みを修正します。

  • 「ゲームしか自分には居場所がない」→「現実にも居場所を作れる可能性がある」
  • 「ゲームをやめたら友達がいなくなる」→「オフラインの関係も築ける」
  • 「自分はゲームしかできない」→「ゲームで培ったスキルは他でも活きる」
  • 「少しだけなら大丈夫」(再燃を招く思考)→「一度始めると止まらないことを知っている」

衝動サーフィン(Urge Surfing)

ゲームをしたいという衝動が起きたとき、**「衝動は波のように高まってもやがて自然に引いていく」**という体験を学びます。衝動が来たときにすぐゲームをするのではなく、衝動の波が引くのを観察して待つ技法です。

行動活性化

ゲーム以外の活動への参加を段階的に増やします。「楽しい・達成感を感じる・つながれる」という3つの要素を持つ活動を見つけることが目標です。スポーツ・音楽・アート・料理・地域活動など、本人の興味に沿った活動から始めます。

社会スキルトレーニング(SST)

オンラインのみでコミュニケーションを取ってきた若者にとって、現実での対人スキルが低下していることがあります。SSTにより現実での会話・自己表現・断り方などを練習します。


9. 【治療③】薬物療法——背景疾患へのアプローチ

ゲーム障害そのものへの特異的薬物療法

現時点ではゲーム障害そのものに対して承認された特異的な薬物療法はありません。ただし、背景にある精神疾患・発達特性への薬物療法が、ゲーム使用のコントロールの改善につながることがあります。

ADHDへの薬物療法

メチルフェニデート徐放剤(コンサータ): 前頭前野のドーパミン・ノルアドレナリン機能を改善し、衝動制御・注意機能を高めます。ADHDを合併したゲーム障害では、コンサータによる衝動制御の改善がゲーム使用の自己制御を助ける可能性があります。

アトモキセチン(ストラテラ): ノルアドレナリン再取り込み阻害薬で、24時間持続した効果が特徴です。衝動性・多動の改善に有効で、就寝前の衝動的なゲーム開始の抑制に役立つことがあります。

グアンファシン徐放剤(インチュニブ): ノルアドレナリン受容体に作用し、前頭前野機能を改善します。衝動性・過活動の改善に有効で、特に感情調節の困難さがあるケースに使用されます。

リスデキサンフェタミン(ビバンセ): 長時間作用する中枢神経刺激薬で、重症のADHDに使用されます。他のADHD薬で効果不十分な場合に選択されることがあります。

うつ病・不安症への薬物療法

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬): うつ病・不安症・強迫症に有効で、ゲーム障害の背景にうつ・不安がある場合に使用します。フルボキサミン・エスシタロプラム・セルトラリン等が使用されます。効果発現まで4〜8週間かかります。

睡眠障害への薬物療法

メラトニン(メラトベル): 概日リズム睡眠障害・入眠障害に有効で、深夜まで覚醒している昼夜逆転の是正に使用します。

スボレキサント(ベルソムラ)・レンボレキサント(デエビゴ): オレキシン受容体拮抗薬で、自然な睡眠を促します。

薬物療法使用時の注意

  • 薬は「補助的な手段」であり、CBT・環境調整・家族支援との組み合わせが前提
  • 特に子どもへの使用では用量の慎重な調整・副作用モニタリングが必要
  • 保護者への十分な説明と同意が不可欠

10. 【治療④】家族支援・家族療法

なぜ家族への支援が治療に不可欠か

ゲーム障害の治療において、家族の関わり方は症状の維持・回復の両方に大きく影響します。 以下の家族の行動が意図せずゲーム障害を維持・悪化させることがあります。

無意識の「強化行動」:

  • ゲームを「友人の代わり」として黙認し続ける
  • ゲームをやめさせようとして怒るが、結局許してしまう(一貫性のない対応)
  • 「勉強だけしてくれればゲームはいい」という取引
  • 子どもが暴れるので何も言えなくなっている

家族心理教育

保護者が以下を理解することが治療の基盤となります。

  • ゲーム障害は意志の問題ではなく脳機能の問題であること
  • 「怒って禁止」より「段階的な制限と代替活動の提供」が有効であること
  • 家族全員で一貫した対応を取ることの重要性
  • 暴力・自傷行為がある場合の安全確保の方法

コミュニケーションスキルの改善

家族セッションでは、子どもとの対話の仕方を具体的に練習します。

  • ゲームを責めるのではなく「ゲームでどんな楽しみを感じているか」を聞く姿勢
  • 「またゲームしてる」という批判→「最近どう?」という接触の変化
  • 終了5分前の予告の実践
  • 「今日できたこと」に焦点を当てた関わり

Community Reinforcement and Family Training(CRAFT)

依存症治療で科学的根拠(エビデンス)が確立した家族支援プログラムです。本人が治療に来ることを拒否している場合でも、家族の関わり方を変えることで本人の受診・治療参加を促すことができるアプローチです。


11. 【治療⑤】入院・集中プログラム

入院治療の適応

以下の状況では入院治療・集中外来プログラムを検討します。

  • 外来治療を継続しても改善がみられない重症例(1日12時間以上のゲーム・完全不登校が半年以上等)
  • 暴言・暴力・自傷行為が頻繁に生じている
  • 昼夜逆転が極度に固定化し外来での是正が困難
  • 著しい栄養不良・身体的問題がある
  • 家族が完全に疲弊・対応不能になっている

入院・集中プログラムの内容

デジタルデトックス環境の提供: スマホ・ゲーム機のない環境での生活を体験します。依存対象から物理的に距離を置くことで、「ゲームなしでも生きられる」という体験を積みます。

規則正しい生活リズムの確立: 決まった時間の起床・食事・就寝・活動を通じて、崩れた概日リズムを再建します。

集団プログラム(CBT・SST・作業療法): 同じ問題を抱える仲間とのグループ活動が、孤立感の解消・社会スキルの回復につながります。

学習支援・キャリア支援: 長期不登校で学習の遅れがある場合、学習支援・復学・進路についての計画立案を並行して行います。

家族との関係修復: 入院中の定期的な家族面談・家族セッションにより、退院後の環境整備を準備します。


12. 治療の経過——回復までに何が起きるか

回復は直線的ではない

ゲーム障害の回復は「良くなったと思ったらまた戻った」という波を繰り返しながら徐々に改善していきます。「後退した」ことを失敗と捉えず、**「波の中での長期的な改善プロセス」**として理解することが重要です。

回復の典型的な経過

初期(1〜3ヶ月): 治療への抵抗が強い時期。動機づけ面接を通じて「少しだけ変わってみようか」という気持ちが芽生え始めます。

中期(3〜6ヶ月): CBTによる行動変容が始まります。ゲーム時間が減少し始める一方で、「ゲームをやめた後の空虚感・退屈・対人不安」が前景に出てきます。この時期に代替活動・居場所を育てることが最重要です。

後期(6ヶ月〜1年以上): ゲーム以外の生活が充実し始め、自然とゲームへの依存が薄まります。学校復帰・社会参加が進む時期です。

予後に影響する因子

良好な予後につながる因子:

  • 早期発見・早期介入
  • 背景のADHD・うつ・不安が適切に治療されている
  • 家族の協力と一貫した対応
  • 学校・社会での代替の居場所・活動がある

回復が難しい因子:

  • 長期間(1年以上)放置・重症化
  • 背景疾患が未治療
  • 家族関係の崩壊・機能不全家族
  • オフラインでの社会的つながりが完全に失われている

13. 不登校・ひきこもりとゲーム障害の複合ケース

不登校→ゲーム障害のパターン

不登校になった子どもが「昼間にすることがない・社会とのつながりをオンラインゲームに求める」という形でゲーム障害に至るパターンが非常に多いです。この場合、ゲームを取り上げることは本人の唯一の居場所・楽しみ・社会とのつながりを奪うことになり、うつ状態の悪化・自傷行為につながるリスクがあります。

正しいアプローチ

不登校とゲーム障害が重なっている場合の基本方針:

  1. どちらが先か・主たる問題は何かを正確に評価する
  2. まず背景にある問題(いじめ・ASD・うつ・不安)を特定して治療する
  3. オフラインの居場所・楽しみが増えてから自然にゲーム時間が減るプロセスを支援する
  4. ゲームを「禁止」するのではなく「ゲームの外にも魅力的なものがある」状態を育てる

「ゲームを取り上げれば学校に行く」は誤解

ゲームを取り上げても、不登校の根本原因が解決されなければ学校には戻りません。「家に居場所がなくなった」状態になり、ひきこもりがより深刻化することがあります。


14. よくある質問(FAQ)

Q. ゲーム障害の診断は何科で受けられますか?

A. 精神科・児童精神科・心療内科が適切な相談先です。子ども・青年の場合は、ASD・ADHDなど発達特性の評価も必要なため、児童精神科が最も適切です。「診断を受けたい」「ゲーム障害かどうか知りたい」という場合もお気軽にご相談ください。

Q. 本人が受診を拒否しています。どうすればいいですか?

A. まず保護者だけで受診することをお勧めします。「本人を連れてこなければならない」ということはなく、保護者への情報提供・関わり方のアドバイス・受診しやすい環境づくりのサポートから始めることができます。CRAFT(家族支援プログラム)を用いることで、本人の自発的な受診参加を促すことができます。

Q. ゲーム障害の治療にどのくらい時間がかかりますか?

A. 重症度・背景・治療開始時期によって大きく異なります。軽症〜中等症では数ヶ月〜1年程度、重症の場合は1〜2年以上かかることもあります。「治療が長い」ことは失敗ではなく、慢性的な問題が回復していくための正常なプロセスです。

Q. ゲームを「完全にやめること」が治療の目標ですか?

A. 多くの場合、「ゲームをゼロにすること」より「コントロールできる状態になること」「ゲーム以外の生活が充実すること」が現実的な目標です。完全禁止を強制することより、使い方を学び・生活を豊かにすることが長期的な回復につながります。

Q. 薬を飲めばゲーム障害は治りますか?

A. 薬単独では治りません。薬はCBT・環境調整・家族支援との組み合わせで効果を発揮します。特にADHDへの治療薬は衝動制御の改善を通じてゲーム障害の治療を助けますが、薬だけでは不十分です。


15. 和光メンタルクリニック札幌宮の森での診療について

札幌市中央区にある和光メンタルクリニック札幌宮の森は、児童精神科を専門とするクリニックです。ゲーム障害・インターネット依存の診断・治療に専門的に対応しています。

当院が大切にしていること

「ゲームばかりしている子ども」を責めるのではなく、その背景にある苦しさ・発達特性・家族の疲弊を丁寧に評価し、本人と家族が一緒に回復できる支援を提供することを大切にしています。

当院での対応内容

  • ゲーム障害(ICD-11)の診断・重症度評価
  • 発達特性(ASD・ADHD)の評価・診断
  • うつ病・不安症・睡眠障害など合併疾患の評価・治療
  • 動機づけ面接(MI)
  • 認知行動療法(CBT)・行動活性化・社会スキルトレーニング
  • 薬物療法(ADHD治療薬・SSRI・睡眠薬等)
  • 保護者への心理教育・家族支援(CRAFT)
  • 不登校・ひきこもりへの包括的な支援
  • 学校・支援機関との連携

こんな方はぜひご相談ください

  • ゲームが止められず学校に行けなくなった
  • 注意すると激しく怒る・暴言・暴力がある
  • 昼夜逆転が何ヶ月も続いている
  • 不登校とゲーム依存が重なっている
  • ADHDやASDがあるかもしれない
  • 正式にゲーム障害の診断を受けたい
  • 本人は拒否しているが保護者として相談したい

「本人が来られなくても大丈夫です。まず保護者だけのご相談から始めることができます。一人で抱え込まずにご連絡ください。」


まとめ

  • ゲーム障害はWHO(ICD-11)が正式に認定した精神疾患で、意志の問題ではありません
  • 診断の基準は「時間の長さ」ではなく「コントロールの喪失→生活への影響→それでも継続」という3要素です
  • ADHD・ASD・うつ病・不安症との合併が非常に多く、背景疾患の評価が治療の出発点です
  • 治療は動機づけ面接(MI)→認知行動療法(CBT)→薬物療法(背景疾患)→家族支援の組み合わせで行います
  • 「ゲームをゼロにすること」より「コントロールできること・ゲーム以外の生活が充実すること」が現実的な目標です
  • 不登校と重なっている場合は特に慎重なアプローチが必要で、ゲームの取り上げが逆効果になることがあります
  • 本人が来られない場合でも保護者だけの相談から始めることができます

和光メンタルクリニック札幌宮の森(札幌市中央区)児童精神科専門クリニック お問い合わせ・ご予約はお電話またはウェブ予約にて承っております。