ADHD治療薬「コンサータ」と「ビバンセ」の使い分け

ADHD治療薬「コンサータ」と「ビバンセ」の使い分け

― 子どもに合う薬を選ぶために知っておきたいポイント
(札幌市中央区|和光メンタルクリニック札幌宮の森)

ADHD(注意欠如・多動症)の治療では、中枢刺激薬である
「コンサータ(メチルフェニデート)」と
「ビバンセ(リスデキサンフェタミン)」が、子どもから成人まで幅広く使用されています。

どちらも「集中力を高める」「衝動性を抑える」効果がありますが、
作用の仕方・効き方・副作用の出やすさなどに違いがあり、
お子さんごとの特性に合わせた使い分けが必要です。

この記事では、保護者の方が理解しやすいように、
2つの薬の特徴・向いているタイプの違いを詳しく解説します。


■ コンサータ(メチルフェニデート)とは?

コンサータは、ADHD治療薬の中でも最も長く使われている薬で、
脳内のドーパミン・ノルアドレナリンの働きを整えることで症状を改善します。

【コンサータの特徴】

  • 持続時間が長い(約10〜12時間)
  • 朝1回の服用で1日分の効果が安定しやすい
  • 効果の「立ち上がり」が比較的スムーズ
  • 注意の散漫さ・ケアレスミス・忘れ物に効果が高い
  • 日本では登録医のみ処方可能(管理が厳しい薬)

【コンサータが向いているタイプ】

  • 「朝が苦手」で、午前中の授業から力を出したい
  • 授業中の集中力の低下、課題のやり忘れが多い
  • 活動性よりも不注意傾向が強い
  • 効果の波をできるだけ少なくしたい

【よくある副作用】

  • 食欲低下
  • 寝つきの悪さ
  • 頭痛・腹痛
  • イライラ感

副作用が出る場合は、量を調整することで改善することが多いです。


■ ビバンセ(リスデキサンフェタミン)とは?

ビバンセは比較的新しいADHD治療薬で、
体内で活性化して効果を発揮する「プロドラッグ型」です。

【ビバンセの特徴】

  • 効果の立ち上がりが非常に穏やか
  • 作用時間は長く、約12〜14時間持続
  • 衝動性・多動の症状に特に強い
  • 「感情の波」や怒りやすさに改善が見られることも
  • 食欲低下はあるが、反動の過食が少ない

【ビバンセが向いているタイプ】

  • 衝動的に発言・行動してしまう
  • じっとしていられず落ち着きがない
  • 感情が不安定になりやすい
  • コンサータで「効きすぎ」「不安定さ」を感じた
  • コンサータがうまく合わなかったケース

【よくある副作用】

  • 食欲低下
  • 口渇
  • 初期のイライラ
  • 不眠(夕方以降の効果が強すぎる場合)

ビバンセは薬の吸収・変換の仕組みから、体質が合う子には非常に安定して効きます。


■ コンサータとビバンセの「違い」を比較

コンサータビバンセ
主な作用ドーパミン・NA再取り込み阻害ドーパミン分泌の安定化
効果の立ち上がり早めで分かりやすいとても穏やか・自然
効果の持続約10〜12時間約12〜14時間
得意な症状不注意・集中のばらつき衝動・多動・感情の不安定さ
副作用の出方やや強めなことも比較的マイルド
食欲低下あり(個人差大)あり(強すぎることは少ない)
感情面イライラが出ることも感情の安定が見られることも
合いやすいタイプ不注意主体のADHD衝動性・多動主体のADHD

■ 使い分けのポイント(臨床でよくある判断)

● 不注意が中心 → コンサータを優先

  • ぼーっとする
  • 課題の抜け漏れ
  • 忘れ物が多い
  • 授業についていけない

細かい集中のスイッチが入りにくいタイプにはコンサータが効果的です。


● 衝動性・多動が強い → ビバンセを優先

  • 思ったことをすぐ言ってしまう
  • 感情のコントロールが苦手
  • 過度に動き回る
  • 先生や友達とのトラブルが多い

ビバンセは「ブレーキ機能」を整える効果が期待できます。


● コンサータが効きすぎる・ムラがある → ビバンセへ変更

  • 午前は良いが午後に落ちる
  • イライラが強まる
  • 眠りにくい
  • 「効いている実感が不安定」

ビバンセの穏やかな立ち上がりと長い持続が合うケースがあります。


● 食欲が落ちやすい子 → ビバンセの方が無理がないことも

ビバンセはプロドラッグで吸収が緩やかで、
「急激な食欲低下」が起こりにくい傾向があります。


■ 和光メンタルクリニック札幌宮の森での薬の選び方

当院では、薬を処方する前に必ず、

  • 生活リズム
  • 食事・睡眠
  • 学校生活の状況
  • ADHDの症状の種類(不注意/多動/衝動)
  • 感情面の安定性
  • 過去の薬の副作用
  • 保護者の意向

を丁寧にヒアリングし、
**「その子に最も負担が少なく、効果が出やすい薬」**を一緒に選びます。

また、薬だけに頼らず、

  • 環境調整
  • 学習支援
  • カウンセリング
  • 親面接(ペアレントトレーニング)

も組み合わせて、学校生活が安定するよう総合的な支援を行っています。


■ まとめ

  • コンサータは「不注意中心」、ビバンセは「衝動・多動」により向きやすい
  • 薬の立ち上がり・持続・副作用の出方に違いがある
  • お子さんの特性に合わせて使い分けることで、生活や学習が大きく改善
  • 和光メンタルクリニック札幌宮の森では、一人ひとりに合わせた治療方針を提案しています