ADHD治療薬の「特徴」と「使い分け」— 札幌市中央区 児童精神科専門クリニック|和光メンタルクリニック札幌宮の森ブログ
ADHD治療薬の「特徴」と「使い分け」
— 札幌市中央区 児童精神科専門クリニック|和光メンタルクリニック札幌宮の森ブログ
はじめに
ADHD(注意欠如・多動症)の治療はお薬+環境調整(働き方・学び方の工夫)+心理的支援の三本柱で進めます。
この記事では、主要なお薬の特徴と使い分けの考え方を、できるだけわかりやすく整理しました。
※年齢やご病状、国内の承認状況により処方可能な薬は異なります。個別の判断は診察で行います。
まず押さえるポイント(超要約)
- 即効性を重視 → 刺激薬(メチルフェニデート、リスデキサンフェタミン)
- 依存リスクや不安が気になる/ゆっくり効いてほしい → 非刺激薬(アトモキセチン、グアンファシン)
- 眠気・情緒の波・睡眠問題も気になる → グアンファシンを併用/切替で検討
- 過去に刺激薬で副作用が強かった/不安が強い/チック傾向 → 非刺激薬から
薬のタイプ別:特徴と違い
1) 刺激薬(中枢刺激薬)
メチルフェニデート徐放(例:コンサータ)
- 作用:脳内のドーパミン/ノルアドレナリンの濃度を高め、注意・実行機能を引き上げる
- 効き方:数十分〜1時間で実感しやすい。持続は1日を通して安定(製剤により差)
- 長所:効果の強さ・即効性。日中のパフォーマンスをしっかり底上げ
- 注意:食欲低下、入眠しづらさ、動悸・血圧上昇、まれに不安増悪。コントロール下での管理が必要
- 向くケース:仕事の締切対応、長時間の会議・運転、資格試験期間など日中の集中を確実に維持したい
リスデキサンフェタミン(例:ビバンセ)
- 作用:アンフェタミンのプロドラッグ。消化・代謝で活性化されるため乱用リスクが比較的低め
- 効き方:朝内服でなめらかに立ち上がり長く保つ印象
- 長所:効きのムラが少ない/午後まで一定。過集中とダレの波が整いやすい
- 注意:食欲低下、口渇、動悸、寝つきにくさ。カフェイン多用は控える
- 向くケース:1日をフラットに保ちたい社会人・学生。プロドラッグ由来の誤用懸念が少ない方が良い場合
2) 非刺激薬
アトモキセチン(例:ストラテラ)
- 作用:ノルアドレナリン再取り込みを選択的に抑える
- 効き方:2〜4週でじわじわ、6〜12週で本領
- 長所:依存性が極めて低い。不安・チックを悪化させにくい。終日カバーしやすい
- 注意:吐き気・倦怠感・眠気、まれに肝機能変動。飲み始めに体調の見守りが必要
- 向くケース:刺激薬が合わない/避けたい、不安傾向が強い、運転・接客で日内変動を避けたい
グアンファシン徐放(例:インチュニブ)
- 作用:α2A受容体を介し前頭前野のネットワーク効率を上げ、情緒の波・衝動・多動を整える
- 効き方:1〜2週で穏やかに実感、数週で安定
- 長所:イライラ・易刺激性・睡眠の質にプラスに働きやすい。依存性が極めて低い
- 注意:眠気・血圧低下・ふらつき。就寝前投与やゆっくり増量で対策
- 向くケース:衝動性・情緒の波・睡眠障害が目立つ、刺激薬で不安増悪があった、併用で凸凹をならしたい
使い分けの実際(よくある場面別)
- 不注意が主で、会議やPC作業に集中したい
→ まずは刺激薬で日中の集中を底上げ。入眠障害が出たら投与時間を前倒し or 用量調整。 - 衝動性・感情の波が強い/対人トラブルが増える
→ グアンファシンを第一選択、もしくは刺激薬+グアンファシン併用で安定化。 - 不安が強い・チック既往あり・刺激薬で気分悪化
→ アトモキセチンから開始。必要ならのちに刺激薬を少量追加。 - 夕方以降も切れ味を保ちたい/日内の凹凸が苦手
→ リスデキサンフェタミンやアトモキセチンでフラットに。 - 食欲低下・体重減少が気になる
→ 非刺激薬を主軸に、食事タイミング(先に食べてから内服)や栄養指導を併用。 - 睡眠の質も同時に改善したい
→ グアンファシン(就寝前)で調整。睡眠衛生と合わせて。
併用・切り替えのコツ
- 単剤で十分な効果が出ない → 作用機序が異なる薬を“少量ずつ併用”
- 例:刺激薬で注意は改善、イライラが残る → +グアンファシン
- 副作用が出た → “量を下げる/投与時間を前倒し/別系統へスイッチ”
- 評価は最低2〜4週(刺激薬は数日で目安、非刺激薬は数週要する)
服薬と同じくらい大切な「モニタリング」
- 血圧・脈拍・体重(開始時・用量変更時)
- 睡眠・食欲・気分(日誌やアプリで見える化)
- 業務の指標(遅刻・提出遅延・ミス件数・集中持続時間 など)
- 運転や機械作業:安定化が確認できるまで慎重に
よくある副作用と対策(簡易表)
| よくある症状 | 出やすい薬 | 初期対応の例 |
|---|---|---|
| 食欲低下・体重減少 | 刺激薬 | 食後内服に変更、用量微調整、栄養補助 |
| 入眠困難 | 刺激薬 | 朝早めに内服、カフェイン控え、就寝前ルーティン |
| 眠気・ふらつき | グアンファシン | 就寝前投与、ゆっくり増量、起立時ゆっくり動く |
| 吐き気・倦怠感 | アトモキセチン | 低用量開始→漸増、食後投与 |
| 動悸・血圧上昇 | 刺激薬 | バイタルチェック、減量/切替、心疾患既往は慎重に |
※MAO阻害薬との併用や重い循環器疾患、未治療の甲状腺機能亢進・閉塞隅角緑内障などは禁忌/慎重投与となる場合があります。
薬だけに頼らない「働き方の整え」
- タスクを細切れに(25分集中+5分休憩など)
- 締切は“前日締切”と“当日締切”の二重化
- 通知は必要最小限、デスクは“定位置管理”
- 週1回の棚卸しミーティング(自分or上司と)で進行確認
薬で脳のブレーキとアクセルを整えつつ、環境調整で効きを最大化します。
まとめ
- ADHD薬は刺激薬(即効・パワフル)と非刺激薬(穏やか・依存性極低)に大別
- 症状プロファイル(不注意/衝動/情緒/睡眠)と生活のリズムで選ぶ
- 副作用は“用量・時間・併用”で調整できることが多い
- 服薬と同時に働き方の工夫をセットで
🌿 和光メンタルクリニック札幌宮の森では
丁寧な問診と評価に基づき、最小有効量からの調整と環境・心理支援をセットでご提案します。
「仕事のミスが減らない」「薬の選び方がわからない」と感じたら、お気軽にご相談ください。

