PTSDにメマンチンは効く?― 研究で期待されている“新しい薬物療法候補”をわかりやすく解説 和光メンタルクリニック札幌宮の森

PTSDにメマンチンは効く?

― 研究で期待されている“新しい薬物療法候補”をわかりやすく解説

PTSD(心的外傷後ストレス障害)は、強いトラウマ体験をきっかけに、

  • フラッシュバック(突然よみがえる)
  • 悪夢
  • 過覚醒(緊張が取れない、音に敏感、イライラ)
  • 回避(思い出す場所・人・状況を避ける)
    などが続き、生活に支障が出る疾患です。

治療の中心はトラウマに焦点を当てた心理療法と、補助としての薬物療法ですが、薬は「効く人・効きにくい人」がいて、選択肢も十分とは言えません。
そこで近年、PTSDの新規治療候補として注目されている薬の一つがメマンチンです。


メマンチンとは?(本来は認知症の薬)

メマンチンは、脳の興奮性神経伝達である**グルタミン酸(NMDA受容体)**の働きを調整する薬で、主にアルツハイマー型認知症に使用されます。

PTSDでは、トラウマ記憶に関連して脳内の興奮性回路が過度に働き、
「記憶が強く固定されすぎる/過剰に再生される」ことが症状の一因になると考えられています。
メマンチンはこの“過剰な興奮”にブレーキをかけ、症状改善に繋がる可能性が研究されています。


PTSDに対する有効性:いま分かっていること(エビデンスの現状)

1) オープン試験(単群試験)で症状改善が報告

民間人女性PTSDを対象にした12週間のオープン試験で、PTSD症状が有意に改善し、忍容性も概ね良好だったという報告があります(ただし対照群がないため、効果の確定には限界があります)。

また、退役軍人PTSDで認知機能の問題を伴うケースに対しても、認知面・PTSD症状・気分の改善が示唆されたオープン試験があります(こちらも“予備的”結果)。

2) ランダム化比較試験(RCT)も報告・進行中

近年、**追加投与(add-on)**としてのメマンチンを検討した研究(RCTを含む)が報告され、さらなる検証が進んでいます。

まとめると

  • 「効く可能性」を示す研究は増えている
  • ただし、まだ標準治療として確立したとは言い切れず、研究段階/適応外になり得る
    という位置づけです。

どんなPTSDに向いている可能性がある?

研究からは、特に次のようなケースで「検討価値があるかもしれない」と考えられています。

  • SSRI/SNRIなどを使っても症状が十分に改善しない
  • 不安・過覚醒に加えて、集中力低下や認知のしんどさが目立つ
  • フラッシュバックや悪夢が強く、生活機能が落ちている
  • 心理療法に取り組みたいが、症状が強すぎて前に進みにくい(※薬で“土台”を整える目的)

※ただし、個人差が大きいので「このタイプなら必ず効く」とは言えません。


安全性と副作用:知っておきたいポイント

メマンチンは比較的使われてきた薬ですが、PTSDで使用する場合も副作用の説明は重要です。

起こり得る副作用

  • めまい、ふらつき
  • 頭痛
  • 眠気/不眠
  • 便秘
  • 倦怠感、落ち着かなさ
    など

また、腎機能の状態によって用量調整が必要なことがあり、併用薬や体質も含めて判断します。


PTSD治療の基本は「心理療法+必要に応じた薬」

薬だけでPTSDが“根こそぎ治る”というより、

  • 症状を和らげて生活を立て直す
  • 心理療法に取り組める状態をつくる
  • 併存する不眠・抑うつ・不安を調整する
    といった役割が中心になります。

メマンチンは、その“選択肢のひとつ”として研究が進んでいる薬です。


当院でのご相談について(札幌市中央区)

和光メンタルクリニック札幌宮の森では、PTSDの症状(フラッシュバック、悪夢、過覚醒、不安、不眠など)について、

  • 現在の治療歴
  • 症状の中心(再体験/過覚醒/回避/抑うつ等)
  • 生活への影響
  • 心理療法の適応
    を整理し、治療方針を一緒に検討します。

「薬が合わない」「治療が進まない」「症状を少しでも軽くしたい」
そんな時は、まずはお気軽にご相談ください。